Research Projects


2003年度の研究テーマ一覧を次に示します.(概要をみたいところでクリック)

I. キャビテーション,気泡運動のダイナミクスに関する研究 (機械工学,海洋工学)

  1. 蒸気キャビテーション ? クラウドキャビテーションの成長・崩壊挙動
  2. 超音波が作り出す不思議な現象 ? 音響キャビテーション
  3. マイクロバブルを人為的に作る ? オリフィスを通じた微小気泡の発生と制御

II. 超音速機 (SST) の環境適合性向上に関する研究 (航空工学)

  1. 超音速機の騒音問題を解決する ? ソニックブーム低減法の確立
  2. 超音速機の性能向上を目指す ? エンジンインテークの開発
  3. 装置から作ります ? 超音速ガンタンネルの動作最適化
  4. 非定常空力現象の計測 ? 高速応答PSPを用いた遷音速デルタ翼におけるバフェット現象の解明

III. 火山噴火現象を見極め,防災に役立てるための研究 (地球物理学)

  1. 火道内マグマ流れを解明する ? 高粘度気液二相流の円管内流れ
  2. 火山性微動 ? 粘弾性流体中における気泡振動
  3. 爆発的噴火 ? 高粘度液体中における破砕波の形成と伝播

IV. 新しい流れの可視化手法に関する研究 (可視化情報学)

  1. 感圧・感温塗料を用いた高速飛行物体表面圧力・温度の画像計測
  2. ディジタルカラー画像処理による気泡流三次元流動計測システムの開発
  3. 干渉画像粒子測定法を用いた膨張・収縮気泡径の高速度画像計測

V. 製造プロセスの効率向上に関する研究 (機械工学,化学工学)

  1. ウェットエッチングによるアパーチャグリル製造プロセスの数値シミュレーション


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I. キャビテーション,気泡運動のダイナミクスに関する研究

(キャビテーションについて知りたい人はここ(htm)をクリック)

(1) キャビテーション・バブル・クラウドの成長と崩壊

(研究論文の一例を見たい人はここ(PDF)をクリック)

 船舶のスクリュー表面などでは,回転にともなって生じる圧力変動のために,常に多数の微細気泡(クラウドキャビテーション)が発生・消滅を繰り返している.この気泡群が消滅する際に放射する数千気圧の衝撃波は,スクリュー表面上に大きなダメージを与える.ここでは,衝撃波管を用いて,キャビテーション気泡群の成長,消滅挙動を模擬し,気泡成長時における相変化の特性を明らかにしていく (担当者: D4 川島 久宜).

(2) 音響キャビテーション気泡の発生と制御

 水中に強力な超音波(これの正体も圧力変動)を発生させると,微細気泡が発生することが知られている.この現象を「音響キャビテーション (acoustic cavitation)」という.超音波洗浄機は,音響キャビテーションによって発生した気泡の破壊力を利用して洗浄を行うものである.また,音響キャビテーションの発生は,一方で,超音波探知機,インクジェットノズル,超音波治療器などの誤作動を生む原因でもある.本研究では,このような音響キャビテーションの特性を,超音波浮揚装置 (levitation cell) を用いた高速度カメラ撮影実験や,流体力学的相互作用を考慮した理論解析によって明らかにすることを目指している (担当者: D3 城田 農,B4 齊藤 泰之).

(3) オリフィスを通じた微小気泡の発生と制御

 キャビテーションは,液体中に存在する直径数10ミクロン程度の気泡がタネとなって発生することが知られている.本研究では,高速電磁バルブを利用して,このような微小気泡核を人為的に作り出す装置を開発した.開発した装置を使うと,直径0.1 mm程度の気泡を.任意の数だけ,こちらの望みのサイズ,間隔をあけて作ることができる (担当者: M1 今村 知大).


II. 高速空気力学に関する研究

(1)ソニックブーム低減法の確立

(詳細な概要を見たい人はここ(htm)をクリック)

 次世代超音速輸送機の開発ポイントのひとつである,超音速飛翔体特有の爆音現象(ソニックブーム)の低減方法を模索する研究.バリスティックレンジ (ballistic range) と呼ばれる超音速飛翔体発射試験装置を用いて,実際に飛行する模型近傍の流れ場の可視化計測を行うとともに,周辺での圧力計測を行い,模型形状の違いによる流れ場,圧力波形の変化を調べる.並行して,実機から発生するブームの伝播挙動を数値シミュレーションによって調べる.

(2) SST用エンジンインテークの流れ特性と最適化

 次世代超音速旅客機開発に向けて,航空宇宙技術研究所(航技研)が進めている,小型高速実験機プロジェクトに関連する研究.この実験機に取り付けるエンジンの空気取り入れ口(インテーク)の特性に関する試験を行い,インテーク内流れの把握を進めるとともに,効率の良いインテーク形式,形状を確立していく.(担当者: M2 本島 圭奈子, M1 山本 伸).

(3) 超音速ガンタンネルの動作最適化

 (2)の実験を行うための実験装置の開発研究.本風洞は,軽量自由ピストンによって瞬時に圧縮加熱した気体を,風洞試験気体として用いる.試験に利用する気流の持続時間は0.1秒から1秒程度である.試験気体の全温を高く維持しつつ,風洞試験の測定時間を長時間確保できるのが特徴である.本風洞の作動方法最適化を目指して,風洞内気流特性の数値シミュレーションを行っていく.(担当者: D2 西澤 宇一, B4 勝又 拓海).

(4) 高速応答PSPを用いた遷音速デルタ翼におけるバフェット現象の解明

 多孔質酸化アルミニウム皮膜を用いた高速応答型感圧コーティング (IV.参照) の実証試験の一環として,遷音速 (M = 0.8-0.9) デルタ翼に見られるバフェット現象の計測と解明を進める.バフェット (buffet) は,流れにともなう著しい圧力の時間的変動現象を意味する言葉である.遷音速域では,翼面上に発生する衝撃波と翼端から生じるはく離渦とが干渉することで,激しい圧力変動が生じる.宇宙科学研究所 (ISAS), 航空宇宙技術研究所 (NAL) との共同研究.(担当者: M1 田部井 孝聡, B4 川上 崇穂).


III. 火山噴火現象を見極める研究

研究紹介記事(市原・亀田, 可視化情報 Vol. 22, No. 87 (2002), pp. 223-228)ダウンロード・・・ここ(PDF)をクリック

(1) 高粘度気液二相流の円管内流れ

 火山噴火の原因は,大まかには,マグマに含まれる,ないし,マグマの周りにある水などの揮発成分が何らかのきっかけで気化,膨張することにある.本研究では,噴火時のマグマ流動を模擬する室内実験装置を用いて,気泡を含む高粘度流体の円管内流動特性を明らかにするためのモデル実験を行っていく.(担当者: M1 中里 良生, B4 主浜 優, B4 羽田 智信).

(2) 粘弾性流体中における気泡振動

 火山性微動は数ヘルツ程度の特徴的な周期を持つことが知られている.この周期を決める要因として,マグマ内に含まれる気泡の膨張・収縮運動の影響が挙げられている.マグマは水の千倍から数億倍の粘度を持つ水飴のような流体であり,このような高い粘度を持つ流体中における気泡運動はまだ解明されていない.そこで,本研究では,高粘度液体中における気泡の運動方程式を新たに導いた.また,衝撃波管や低周波圧力発生装置を用いた実験を通じて,気泡運動に対する剛性の影響を明らかにした.

(3) 高粘度気泡流中の破砕波の形成と伝播 ?爆発的噴火の機構解明に向けて?

 火山の爆発的噴火時におきる「マグマの破砕」の物理過程を明らかにする.破砕とは,マグマ中に溶解している気体が,噴火時の急減圧に伴い析出・発泡する現象である.このようなマグマが火口に達すると,中に含まれる気泡のために飛沫状となって噴出し,激しい噴火現象として観察される.本研究では,衝撃波管を用いてこのプロセスに関するモデル実験を行っていく.東北大学・市原美恵博士との共同研究 (担当者: M1 中里 良生, B4 主浜 優, B4 羽田 智信).


IV. 新しい流れの可視化手法に関する研究

(1) 感圧・感温塗料を用いた高速飛行物体表面圧力・温度の画像計測

詳細な説明はここ(htm)をクリック

研究紹介記事(亀田・浅井・江上, 冷凍 Vol. 77, No. 901 (2002), pp. 991-996)ダウンロード・・・ここ(PDF)をクリック

 航空宇宙技術研究所(NAL)・浅井圭介博士との共同研究.感圧・感温塗料は,圧力や温度の変化によって,発色の違いが生じる特殊な塗料である.この塗料を物体表面に塗布し,その発色特性を調べることで,表面上の圧力・温度を計測することができる.これまで,圧力・温度は,点計測でしか計測できなかった.この塗料を使えば,これらの物理量を面で計測できるため,計測によって得られる情報量が飛躍的に増える.本研究では,未だ難しいとされている非定常圧力変動や,温度・圧力を同時にとらえることを目標として,新しい塗料やより良い画像処理計測技術の開発を進めていく.(担当者: M1 田部井 孝聡, B4 川上 崇穂).

(2) ディジタルカラー画像処理による気泡流流動計測システムの開発

 化学プラントや原子炉などに見られる上昇気泡流は,気泡の並進運動と周囲液体の流動がお互いに干渉する複雑な流れ場の一つである.ここでは,気泡流中の気泡の動きと液体の流動を「同時に」ステレオカラービデオ撮影によって可視化する手法の開発と,得られた連続画像を用いて気泡・液体双方の三次元的な流速ベクトルを計算するソフトウェアの開発を進める.(担当者: 技官 佐藤 慶太).

(3) 干渉画像粒子測定法を用いた膨張・収縮気泡径の高速度画像計測

 キャビテーション気泡は,きわめて速い成長速度を持っている.わずか1000分の1秒の間に体積は数千倍に達する.一方,干渉画像粒子測定法 (ILI) は,レーザーを用いた光学的計測法の一つである.粒子を回折格子として用いることで,粒子サイズを干渉縞間隔に変換することができる.本研究では,ILI法・シャドウグラフ法と高速度ビデオカメラを組み合わせた計測システムを開発し,急激な気泡成長過程の定量的な把握を目指していく (担当者: D4 川島 久宜).


V. 製造プロセスの効率向上に関する研究

(1) ウェットエッチングによるシャドウマスク製造プロセスの数値シミュレーション

 パソコンなどに用いられる高解像度ディスプレイでは,電子線のスポットを絞るために,シャドウマスクと呼ばれる部品が用いられている.シャドウマスクは,薄い金属板に直径0.1 mm程度の孔が0.2 mmピッチでびっしりと穿たれたものである.シャドウマスクの製造はスプレーエッチングによって行われる.本研究では,穿孔過程と液流動との関係を詳しく調べていく.最終的には,製造工程を数値的に予測できるソフトウェアの開発を目指す.(担当者: D2 西澤 宇一).


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